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西岡利晃、1位ムンローと指名試合で完璧V5!

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今日、10月24日は西岡vsムンローの日。
9年前の2010年10月24日。

両国国技館。

KOはボクシングの魅力だと思うし、できればKOが見たい。それでも時として濃厚で美しいエッセンスたっぷりな12ラウンズを何度も見直したい試合がある。

僕にとって90年代のそれは川島郭志vs セシリオ・エスピノ戦で、2000年代のそれがこの試合。

WBCスーパーバンタム級王者・西岡利晃がランキング1位の指名挑戦者、イギリスのレンドール・ムンローに完勝し5度目の防衛を果たし、その盤石ぶりを見せつけた。

……この試合の半年前、2010年の4月。ボクシングファンは奈落の底に突き落とされた。

4月19日にエドウィン・バレロが帰らぬ人となり、4月30日に長谷川穂積がモンティエルとの頂上対決に敗れるという地獄の連続ショック。まだその傷の癒えきらない10月だった。

1位の指名挑戦者との12ラウンズをハイパフォーマンスで駆け抜けた、西岡の輝かしいマスターピースのひとつ。

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癒えきらない長谷川ショック

2010年4月は自分を含め、ボクシングファンは心底深く傷ついた。

エドウィン・バレロの死から2週間後、長谷川穂積がモンティエルにTKO負け。

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日本のエースが挑んだ事実上の統一戦。全ボクシングファンが夢を託し見守った注目の大一番での悔しい悔しい敗北。表現し難い辛い結末だった。

でもまだ日本ボクシング界には西岡がいる。この年10月の頭には李冽理がプーンサワットに大金星の判定勝ちでWBAのスーパーバンタム王座をゲット。西岡と季でこの階級のWBAとWBC王座を陣取った。内山高志もこの年の年始に世界奪取して防衛を重ねており、長谷川も再起を表明してくれた。4月の心の傷は癒えてはきているけど…まだ完治はしてない中、1位の挑戦者を迎えての西岡の指名試合が発表された。

西岡は3度目の防衛戦の直後、リング上でこう宣言している。

「誰とでもやりますよ。カバジェロでもいいしファン・マヌエル・ロペスでも良い。どこへでも行きます」

ジョニゴン戦のKO劇で世界にインパクトを残し確変モードに入った西岡。強い奴とやらせてくれよ。勝って見せるから。その心意気と発言たるやなんとも痛快。34歳にして心・技・体は完全な昇り調子だ。

長谷川モンティエル戦のセミで4度目の防衛を果たした直後も、彼は各メディアでビックマッチを求めてる発信を続けていた。そうして迎えた1位との試合。

帝拳の本田会長も「ここをクリアすればビックマッチへ」という旨の発言をしており、いよいよ念願のドリームマッチが真実味を帯びてきたところで、レンドール・ムンローはトップコンテンダーの肩書き持っている。

さぁ西岡。負けは論外。
勝ち方が問われる。

ここをクリアして、夢の大舞台に行こう!
そんな思いで見守った試合だった。

豪華イベント「ワウフェス」のメイン

この日はセミでロマゴンが2階級制覇を狙う世界戦が組まれ「ワウフェス」と題してWOWOWが長時間の生中継 。セミ以外も豪華カード満載のラインナップだった。

この日のカード

・西岡利晃vsレンドール・ムンロー(世界戦)
・ローマン・ゴンザレスvsフランシスコ・ロサス(世界戦)
・亀海喜寛vsホセ・アルファロ
・ホルヘ・リナレスvsヘスス・チャベス
・山中慎介vsホセ・シルベイラ

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まさに帝拳のお祭り!

今振り返れば山中慎介の試合を生観戦するのはこの日が初めて。岩佐亮佑との対決に駒を進めるひとつ前の試合がこの日だった。メキシコのシルベイラに一方的に左を打ち込んでギブアップさせてみせた。

亀海とリナレスの相手はどちらも元世界王者で、ここで勝てば次のステージへ距離がグッと縮められる大事な一戦。そんな試合にどちらも危なげなく勝利。

セミにロマゴンが登場したと思ったら…あっという間にロサスを3度倒して2回TKO勝ち。さくっと世界王座2階級目をゲットした。2階級制覇ってこんな簡単に獲れちゃうものなのか笑

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生ロマゴンにも初めてお目にかかったけど笑える様な圧勝ぶり。力の差が有りすぎて、相手がかわいそうになるぐらい。

場内を見渡すとほぼ満席に埋まってきてる。

イギリスからのムンローの応援団が少数ながらよく通る声でムンローコールを始めたので、対抗する様に西岡コールが始まった。

8パックの腹筋と戦前予想

試合前に話題になって報道されていたのが、挑戦者ムンローの肉体美。来日してから調印式、計量に至るまでの間に度々そのネタが拡散されていた。もちろん世界挑戦するボクサーなのだから引き締まった肉体美は当然といえば当然なのだけど、彼が特に注目されたのは8パックの腹筋。

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よくCMや本などで「腹筋を6パックに」という表現を使うが、6どころか綺麗に8つに割れた「8パック」という事で、ムンロー自身もそれをアピールするかの様なポーズや写真を沢山提供していた。

ボクサーの腹筋の割れ方がそのままボディの打たれ強さに比例するかというと、そんな事はない。どんな選手でも急所に貰えば効くときは効くもの。実際に海外の試合で筋肉美ムキムキの選手が序盤にボディ1発であっけなく沈む試合は沢山あるし、葛西トレーナーも「ああいうのは、別に怖くないんですよ」と言っている。

21勝9KOの戦績から察するに、ムンローはKOパンチャーではない。

動画で過去の試合を見てみると、技術で相手を空回りさせるタイプでもない。愚直に前進を続けて相手の心を折る判定勝ち、そんなパターンが多そうだ。そのスタイルで着実にランクアップして1位まで登ってきた選手なので、崩し切るのは難しいかもしれない。

初回でスピードは西岡に分が有ると確信出来る様なら負ける心配は無いんじゃないか。あとは覚醒した西岡のモンスターレフトに期待したい。ざっくり言うとそんな予想を立てていた。

ジミー・レノンJrはやっぱり美声

程良い長さで前座試合がKO決着。

メインイベントの頃には完全に満席になっていた。

きました!

ビックマッチのリングアナはこの人!
ジミー・レノンJr氏。

その試合に合わせた日本語を冒頭に取り入れる、ファンサービス旺盛な彼のアナウンスは本当に素晴らしい。

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この日はワウフェスだったので「Wowfes! It's Show time!」ハイトーンの美しい美声。

これ生で聞くだけで3万円の価値あるって。

「スピーキ~ン  ニシオ~カ!」

さぁ始まる。

美しい12ラウンズ

井岡一翔の試合の後、Twitter上で「井岡のボクシングは勉強になる」系のツイートをよく見かける。確かにそう思う。この日の西岡が見せた美しい12ラウンズも、見てない方々には是非とも見て欲しい。

西岡とムンロー、2人のトランクスカラーはパープルとイエロー。対象的な色のコントラストがリングに浮かび上がり、クリンチが少ないので内容はもちろん「映像美」としても素晴らしい試合だった。

初回始まってすぐに感じたのは、歴然としたスピード差。

最初のビックラウンドは5回、モンスターレフトがムンローの右側頭部を捉えた。

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ムンローの前進が一瞬止まる。効いてる。
速攻で連打を打つ西岡。
今日はコンビネーションの回転も冴えてる!

焦って攻め急ぐ事もなく、反撃もきっちり冷静に捌く。それでもムンローはラウンド終盤に相打ちに近いタイミングで右を被せて来た。まだ深入りは禁物。

次のビックラウンドは7回

西岡の右フックがムンローのストマックに炸裂!

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被弾した後、動きが止まり後ずさりするムンロー。

6パックだか8パックだか知らないけど、分かりやすく効いた素振り見せちゃダメでしょ~と思ったが、このストマック(みぞおち)に強打を貰うとどんな選手でも呼吸が止まる衝撃を受けるらしい 。

西岡はこのボディの後もすかさずラッシュ。打ちたいだけ打ってムンローが打ち返す頃には西岡はもう居ない。中盤戦でこういうラウンドを作れたのは大きい。ポイントは序盤から連取していた中で、ペース争いでも完全に西岡が試合の流れ掌握した。ムンローは西岡の足について来れない。

試合前の評判通り、ムンローは打たれ強い選手だった。倒れてもおかしくないクリーンヒットが何発も入っているけど耐え続けている。ただ、いかんせん動きが直線的で横への動きに乏しい。西岡からしたらコントロールし易い部類の相手だったと思う。

それでも実力でこの日の挑戦キップを勝ち取って来たトップコンテンダー。完全な西岡ペースの流れの中でも諦めずに打ち返す。中盤からは西岡の目の周りも腫れて来た。

10回に西岡がまた山場を作る。

フットワークでムンローを翻弄し、自分が当てたいボディを面白い様に当てまくる。一体何発入ってるだろう。右、左、ストレート、フック…ムンローの脇腹を攻め続けた。

その流れの中、この日一番のパーフェクトブローが決まる。

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えぐる様な右のボディフック!

深々と突き刺さった。

これでもムンローは倒れない。動きが止まる標的を逃がすまいと追撃。「下を叩いて上をこじ開ける。こうやるんだよ」と言わんばかりの見事な上下の打ち分けっぷりに場内大歓声。KOへの期待感が高まっていく。全てのボクシング練習生に見てほしいハイライトシーンだった。

これでも倒れないムンローは、メンタルの強さなのかフィジカルの強さなのか…凄い。

西岡もKO勝利への拘りを最後まで捨てなかった。

11回も猛ラッシュを仕掛け、最終12回も無呼吸連打の山場を何度も作った。最終回でこのラッシュが出来る34歳の王者と、ポイント劣勢でダメージ濃厚でフラつきながらも試合を捨てずに前進する挑戦者。どちらも倒れる事なくこのナイスファイトは判定勝負へ。

大差の3-0で西岡が防衛成功。

満員の観客はこの二人のパフォーマンスに大満足だった様で、熱い拍手と歓声がリングに注がれた。

試合後、爽やかにふるまって西岡を称えるムンロー。それでも敗戦は敗戦であり、泣きだして悔しそうにコーナーポストを殴り出した。世界王者になるのとならないのとでは天地の差。今日のチャンスに人生を掛けて挑んで来たんだろう。頑張ったけど相手が悪かったね。だって覚醒期の西岡だもの。

涙するムンローを見て、西岡ファンも激励の言葉を叫ぶ。「ムンロー良かったぞ!」「また次も頑張れ!」

前座試合の豪華カードは全てKO決着。
メインは見せ場たっぷりの美しい12ラウンズ。

国技館を出る時に観客は皆、大満足の感想を口にしていた。

西岡利晃と長谷川穂積

国技館を出たら、雨が本降りに!

うわ~傘もってないよ。

小走りで両国駅近くのラーメン屋に入り、友人とこの日の試合を振り返った。

「いや~両国で西岡の世界戦、ウィラポン3戦目以来だね。こんな日が来るとは思わなかったわ」

ウィラポン3戦目は分の悪いドローで、実質負けに近い内容だった。それが今やV5の安定王者として長谷川ショック後のボクシング界を背負う立場になっており、この日の勝利でビックマッチへの期待感も更に高まってきた。

国技館から近いお店だったので、隣の席の人達もボクシングの観客だった。

「今日の西岡は良かったね~」

「彼は本当に一皮むけたよ」皆、同じ感想だ。

彼等はその後でAKBの話を始めた。この時は空前のAKBブームで、総選挙なんて街中で見ている様な頃だ。

こちらは1か月後に迫った長谷川の再起戦について会話した。11月26日に名古屋でブルゴスとのフェザー級王座決定戦が控えている。モンティエルに敗れた後の再起戦が、即世界戦でしかも一気に2階級アップというチャレンジマッチ。

「モンティエル戦、いまだに引きずるよ…長谷川が負けるところなんて、二度と見たくない」

日本のエースの巻き返しを期待する思いはありながらも、長谷川穂積という存在が大き過ぎて、また負ける姿を目にするかもしれないと想像すると、正直怖い。その思いは僕も友人も一緒だった。

店内モニターにはこの年のヒット曲、ポニーテールとシュシュのPVがずっと流れている。

今日の西岡は良かったけど、来月の長谷川が不安。

「長谷川、大丈夫かなぁ。今日はとりあえず西岡の完璧V5を祝うか」

2010年10月24日。日曜日。

安堵と不安が交差する、雨の両国だった。

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