進撃のボクヲタ

アラフォー会社員のボクシング観戦記&その他の雑記

幻の豪華ツアー 井上尚弥 vs ジョンリル・カシメロ 妄想観戦記 ~Lost Fantasy~



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2020年4月25日。

モンスターのラスベガスデビュー戦。

WBO王者カシメロとの3団体王座統一戦。

 

 

チケットは発売と同時に飛ぶように売れ、マンダレイベイ・イベンツセンターは満席になる事が予想されていながら、新型コロナウィルスの影響で試合は延期に。

 

・・・もうひとつの世界では?

 

ウィルスの蔓延は起こらず、この統一戦は予定通りに開催されていた。4泊5日の観戦ツアー。ラスベガスでの幻の観戦記。

 

INDEX ・4月22日  成田出発~ラスベガス到着
・増田アナの予想
・4月23日  自由行動の日
・大和田常務の予想
・4月24日  計量見学&エキマ懇親会
・4月25日  決戦当日
・第1ラウンド  尚弥の世界
・第2ラウンド  カシメロの世界
・第3ラウンド  ゲスト席からの世界
・第4ラウンド  実況席からの世界
・第5ラウンド  カシメロの世界
・第6ラウンド  観客席からの世界
・勝利者インタビュー
・試合翌日  尚弥の世界
・いつか、時空を超えて

 

 

4月22日 成田出発~ラスベガス到着

ついに来たモンスターのラスベガスデビュー。
観戦ツアーのプランはいくつかの選択肢の中から考え抜いたうえで、WOWOW TRABELのエキサイトマッチ特別企画ツアーを選んだ。理由はオプションの内容に最も価値を感じたから。

 

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 エキサイトマッチ特別企画ツアーの内容
●観戦席はカテゴリー1クラスの座席を用意
●試合前に行われる計量の見学
●エキサイトマッチ解説陣との懇親会
●会場まで徒歩圏内の4つ星ホテルに宿泊
●快適なJALビジネスクラスプラン

 

ツアースケジュール
4/22(水) 成田発 ラスベガス到着
4/23(木) 自由行動
4/24(金) 計量見学 & 懇親会
4/25(土) 試合観戦
4/26(日) ラスベガス出発 成田到着

 

価格的には一番高かったけど、計量見学やエキサイトマッチ解説陣との懇親会なんて超が付く程に希少だし、泊まるホテルもどうせなら良いところで快適に過ごしたい。


4/22(水)に成田を出発。

このツアーの為に仕事の引継ぎ、タスク漏れに関しては徹底的にチェックした。ツアー中は仕事の事は忘れよう。成田発の飛行機が長い助走を終えて、空を飛び始めた瞬間。心はアメリカへ。さぁ。ついに憧れのラスベガス。

 

フライト時間は約12時間。

始めはツアー仲間達もテンション高めに試合予想を会話していたが、しばらくすると皆眠り始めた。僕はタブレットでカシメロとテテの試合を見直した後、続けて井上ドネア戦をフルラウンド見直して、頭の中で今回の試合を想像した。

 

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どう考えても井上が負けるパターンなんて思い浮かばない。カシメロには悪いけど、ラスベガスデビューを飾る相手としてはちょうど良い。WBO王座を持ってくれたおかげで統一戦という箔もつくし。

 

長い様で短いフライト時間が終わり、ラスベガス マッカラン国際空港に到着。

 

空港からホテルまではバスで移動した。泊まるホテルはラスベガスの4つ星ホテル"ルクソール・ホテル & カジノ"

 

ツアー仲間の一人が声をあげる。
「 おお!尚弥だ! 」

 

ルクソール・ホテルの入口の巨大モニターに、井上のKOシーンがダイジェストで流れている。試合が開催されるのはマンダレイベイであってこのホテルではないのに、こうして映像が流れているという事は現地でもかなり注目のイベントなのだろう。

 

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井上がパヤノを一撃でKOするシーン。YOUTUBEで何十回も見た映像が、こうしてラスベガスで流れているのは嬉しい。井上がラスベガスで試合をするという事実と、自分は現地に来たんだという実感が沸いてくる。道行く旅行者達も映像をみて「Great!」と言っており、その声を聞いて誇らしくなった。

 

僕の部屋は2人部屋で、ルームメイトはツアー仲間の河野さん。昨年知り合ったボクシングファンで年齢は僕より5歳程上の穏やかな人。室内は想像していたよりも広く、快適そう。

 

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部屋の窓からプールが見える。
「Tokky、プールに行かない?泳がないけど雰囲気を味わいたい」「me tooです。行きましょう!」僕らは荷物を置いて、そのまま手ぶらでプールに向かった。


プールでは何組かのカップルが優雅に泳いでる。

 

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女性は金髪の美女で映画のワンシーンみたい。
プールからマンダレイベイ・ホテルが見える。
「あそこでモンスターが戦うんですね」
「凄い事だよね。改めて」
部屋に戻って、ツアー仲間達と近くのレストランで食事した後は、すぐに深い眠りに落ちた。

 

 

・・・カシメロと向かい合う井上。

 

序盤からずっと井上ペースで試合が進んでる。

そろそろダウンが奪えるんじゃないか。

なのに一体何だ。この嫌な感じ。

 

何か嫌な予感がする。

 あ・・やめて!

 

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ウソだろ尚弥!! 

尚弥-----ーーー!!!

 

目覚めたら現地時間の深夜3時だった。

妙な夢だなぁ。はやく忘れよう。

僕はすぐにまた、深い眠りに落ちた。

増田アナの予想

増田アナ、井上カシメロ戦の予想をお聞かせください。普段は聞けない本音の部分も、突っ込ませていただきますよ。


「もちろん井上選手の勝利を信じてます!」


どの様にして井上選手が勝つのか、きっと具体的なイメージをお持ちだと思うのでお聞かせください。増田アナは日本ボクシング検定2級をお持ちなんですよね。

 

「はい。この写真は3級ですが、2級もゲットしました!次は1級を目指してます」

 

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その検定はかなりの努力を要すると聞いています。それを取得され、且つエキサイトマッチで毎週色々な試合を観つつ、更にプライベートでも試合観戦に行かれてますよね。増田アナ目線で、井上カシメロ戦の具体的な試合展開が聞きたいです。

 

「私は、初回のカシメロ選手の出方で展開は大きく変わると思っています」

 

なるほど。

 

「多分ですけど、カシメロ選手は総合力・自力では井上選手が上である事は分かっている様に思うんです。試合が長引く程、ラウンドが進む程に井上選手が有利になっていく。一発があるカシメロ選手からしたら、ラスベガスでのデビュー戦で期待も集まり、プレッシャーも感じるであろう井上選手を叩くとしたらいつなのか?と考えると1ラウンド目から出て来る可能性はあると思います。フツーにボクシングをしても正直、勝ち目はないかと」

 

ハッキリ言いますね~!

 

「私なりに両選手の過去の試合をかなり分析しました。カシメロ選手はテテ選手との試合の様に、タイミングを掴むまでは序盤のラウンドを慎重に戦う可能性もありますが、それをやったら井上選手が一方的に、自分が当てたいパンチを当てる展開になるとみています」

 

井上尚弥の戦力バロメーターは、2020世界ボクシングパーフェクトガイドでも高い評価を得ていましたね。

 

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「そうですね!ここだけの話・・・WOWOW解説陣の方々が"井上有利だけどカシメロの不気味さも怖い”とか"一発はドネアより上かも"という話をされてるんですが、私は相槌を打ちながらもそうは感じてないのです。 いやいや、井上選手の圧勝でしょう!と思ってるところは正直ありますね笑」

 

わかる~^^

本音を話してくれてありがとうございます。

ズバリ決着は何ラウンドでしょうか?

 

「6~9回で井上選手のKO勝ちです!」 

4月23日 自由行動の日

この日は一日、自由行動。

ルームメイトの河野さんとツアー仲間と4人で立てた計画は「王者、元王者が居そうなところをウロウロすべし」の一択。他のツアー仲間は観光地巡りに行ったメンバーもいる様だったけど、僕らは自由時間でもボクヲタ的に行動した。

 

水族館:シャークリーフ・アクアリウム

ジム見学:ワイルドカードジム

 

ルクソールからシャークリーフ・アクアリウムに向かう途中。フリーモントホテルの前を通ると、巨大なオーロラ・ビジョンに見覚えのある2人の顔が映っている。

 

「おお!ロマチェンコとロペスだ!」  

 

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5月30日にこのラスベガスでの開催が発表されたライト級の統一戦。ワシル・ロマチェンコ vs テオフィモ・ロペス。全世界注目の一戦の試合前のプレ映像が大画面で流れている。凄い。こういうところでもボクシングの本場にいるんだという実感が沸く。

 

程なくして、水族館に到着。

 

ラスベガスのオアシスと言われているシャークリーフ・アクアリウム。ここに来た理由は勿論、アクアリウムを見たいからではない。

 

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ここは観光スポットの名所で、ボクシングの元王者や現王者もしばしば訪れるらしい。この時期、ラスベガスではボクシシング以外のスポーツやエンターテイメントでもイベントが集中しており、観光客が沢山訪れる場所に行けば、ボクシング界のビッグスターにもお目にかかれるかもしれない。

 

誰かに会えたらいいな・・そんなミーハー気分で館内を歩いていると、ツアー仲間が突然足を止めた。「あそこに凄い人だかりが出来てます。有名人がいるのかな」

 

ちょっと見て来ますよ。

そういって河野さんが人だかりの中心にいる人物を見に行った。

 

「ちょ!ちょちょちょ!みんな来て」

「あれ、パッキャオじゃないスかぁあああ」

「本物?影武者もいるらしいじゃん。本物?」

 

人波を掻き分け、至近距離でその人物を見た。

間違いない。本物のマニー・パッキャオがそこにいる。しかも握手・写真撮影のファンサービスをしてくれている。「パッキャオ!パッキャオがいるぞ!」 

 

握手してくれた。手が震えた。そして奇跡の記念ショットをゲット!

 

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こんな幸運があっていいのか。

本当はパッキャオに伝えたい言葉があった。もし会えた時に備えて、伝えたい事を英語で書いたメモを用意していたけど、凄い人だかりでパッキャオのSPも「そろそろここは動きたい」そんなオーラをガンガンに出して来たので、ここは我慢すべしか。僕らの後にも、写真を撮りたくて並んでる人達が沢山いて、一瞬で凄い行列になっていた。

 

アクアリウムを後して、次はカリフォルニアのワイルドカードジムに向かった。程なくしてジムに到着。

 

パッキャオを育てたフレディ・ローチトレーナーが構えるワイルドカードジム。きっと中で誰かが練習しているに違いない。

 

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練習してる選手達の邪魔にならないように、そっと覗こう。”見学は自由”と書いてあったので、4人でぞろぞろと入口から入ってみる。すると・・

 

フレディ・ローチが選手のミットを持っている。おぉ~ローチだぁあああ!と声に出したい気持ちを押さえながら、リングの近くまで近付いていく。邪魔しなければここで見てても大丈夫そうな雰囲気だな。

 

視界に入った瞬間はミットを持つローチだけに目が行ったけど、パンチを打ち込んでいる選手も超良い選手だ。ハッキリ言って音が違う。背中越しで顔が見えないけど、その後ろ姿には見覚えがある気がした。

 

ツアーメンバーが呟く。

「あれ・・比嘉大吾じゃね?」

いやいやそんなまさか。と、次の瞬間。

その選手の顔が見えた。

 

比嘉大吾がいるじゃないかぁあああああああ。

3ラウンド程のミット打ちが終わった後、比嘉はグローブを外してローチと話し込んでいる。まさかローチと比嘉のミット打ちを拝めるなんて。これだけでも来た甲斐がある。僕達に気付いたローチが話しかけてくれた。

 

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「日本から来たのかい?」英語が堪能な河野さんが、ローチと会話してくれた。どうやらこの後にパッキャオが練習に来るらしい。何たる幸運・・ただ来る時間は夜遅いかもとの事だったので、今日はジムを後にする事にした。記念写真のタイミングは訪れなかったものの、ミゲール・コットの姿も拝む事が出来たし、カリフォルニアからラスベガスまでの距離は近くはない。戻るのにそれなりの時間がかかる。

 

僕達は大満足でワイルドカードジムを後にした。ラスベガスに帰ってきた頃、外はもう真っ暗になっていた。

 

朝はロマチェンコ vs ロペスが映っていたフリーモントホテルのオーロラ・ビジョンが井上 vs カシメロに変わっている。さぁ、明日は計量だ。

 

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大和田常務の予想

大のボクシングファンで、観戦した試合はこれまで50,000試合以上という筋金入りのマニア。大和田常務。今日は試合予想の本音をお聞かせください。常務、この試合は井上にとってどんな試合になるんでしょうか?

 

「WBSS優勝で、今や全世界の注目が井上君に集まっていると言って良いでしょう。この試合は真の世界的スターへの足掛かりとなる重要な一戦です」

 

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「ドネア戦は数多くのメディアで年間最高試合に選ばれています。ボクシングファンだけではなく全世界のスポーツファンにその存在を認知されつつあるこのタイミングで、待望のラスベガスデビュー。も~~楽しみで楽しみでたまらんですよ」

 

カシメロは井上がほとんど日本でしか試合をしてない事を指摘し、自分の方が有利に戦えると発言してます。本場アメリカのリングで戦った経験は自分の方が上だと。

「ほほ~。そんな事ぐらいしか言えないんですかねぇ~」

 

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「井上君は2017年9月にアメリカのリングで二エベスに圧勝してます。日本を出るのは初めてではありませんよ。確かにラスベガスでの試合は今回が初めてですが彼はパワーだけでなくハートもモンスター。そんな事でパフォーマンスが変わる様な選手ではありません」

 

常務の予想もやはり、井上有利でしょうか?

 

「な~にを言ってるんだね君は笑 当たり前でしょう。カシメロは実力で3階級制覇しているとはいえ、今回は相手が悪い。一発でも井上君が上ですしスピード、テクニック、ゲームメイク・・・全てのスキルステータスでカシメロを凌駕しています。ズバリ5回までに井上君のKOないしTKO勝利で試合は終わります」

 

カシメロもKO宣言をした様です。遅くとも10回までにはイノウエをKOする。真のモンスターは俺だと言い放ったとの事ですが、どう思いますか?

 

 「別に何とも思わんよ。まぁ~内心は怖がってるんじゃないのかね」

 

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「カリメロ...あ、間違えた。カシメロちゃんよ。 やれるもんなら、やってみなっ」

4月24日 計量見学&エキマ懇親会

試合の前日、計量の日。

この日は計量見学の後でエキサイトマッチ解説陣との懇親会も予定されている。

 

計量会場は人、人、人でごった返していた。

 

最初に井上が計りに乗る。

特に酷い減量苦でもなく、いつもと何かが違うという話は聞かなかった。

バンタム級リミットの118ポンドでクリア。

 

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肩回りの筋肉は前回より更にビルトアップされた様に見える。顔つきも精悍そのもの。

ポーズを決めるモンスターに大歓声が注がれる。

 

続いてカシメロが計りに載った。

見た感じ、よく絞れている様に見える・・・

が、何か様子がおかしい。

 

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体重をコールするタイミングなのに、しばらく経ってもその気配がない。

 

何の時間なんだ?

まさかの事態が脳裏をよぎる。カシメロはライトフライ級王者時代に5.25ポンドのリミットオーバーで王座を剥奪された過去がある。いやいやこのビッグマッチで体重超過なんてしないだろう・・

 

妙な間が空いた後、

カシメロのウェイトがコールされた。

118ポンド、リミットクリア!

この間は何だったんだ。焦らしやがって。

 

 

そして恒例のフェイス・オフ。

睨み合う両者に無数のフラッシュが降り注ぐ。

 

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30秒は睨み合っていただろうか。カシメロから先に視線をそらした様に見えた。計量を終えて会場を後にするモンスターにWOWOW解説陣がインタビューを決行。

快く答えてくれるモンスター。

 

「いつも通りですね。体調も万全ですよ。やっぱり何度やっても、あのフェイスオフってやつは苦手ですね」

 

ピリピリ感とは対極の和やかな話しっぷり。インタビュアーはフェイスオフについて突っ込んで質問した。 相手が先に視線を外した様に見えたが、自分から先には外さないというポリシーなのか?という質問。

 

「別にこだわりはないです。実は僕、”一番怖いフェイスオフ" を既に経験してるんですよ。内山さんと睨み合った時です。一瞬ですが、本気で睨んできてめちゃ怖かったんですよ」

 

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「内山さんと殴り合うかもしれない?みたいなあの瞬間に比べたら、ドネアやカシメロとのフェイスオフなんて正直、何とも思いませんから笑」

 

待望のラスベガスデビューを明日に控えながら、冗談も交えて受け答えするリラックスした井上を見て、ツアー仲間も皆安心した様子。モンスターの顔には自信が溢れ出ていた。

 

初めての計量見学。

間近で観れて良かった・・

 

そして今日のお楽しみは更にもう1コンテンツ。エキサイトマッチ解説陣との懇親会!ツアーメンバー全員がこの会を心待ちにしており、集合時間の少し前には全員が会場に揃っていた。

 

乾杯の音頭は高柳アナ。「皆さんも計量での井上選手を見て、より期待感が増したかと思います。それでは決戦前夜の懇親会を楽しみましょう。乾杯!」

 

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高柳アナ、増田アナ、浜田さん、亀海さんの4人を交えての懇親がスタート。

 

ここでなんと!

浜さんが僕らのテーブルに来てくれた。

浜さ~ん!!

気になっていたツイッターの事を聞いてみた。

 

これまでSNSでの発信はしてこなかった浜さんが突如開始したツイッターはファンの間でも話題になっており、ご本人かどうかを最初は疑っていたほど。

 

「こういう時代だから、ボクシング界の為になると思ってやっています。まだ始めて3ヵ月ですけど、ファンの声がダイレクトに聞けるのは良いですね。それと業界のニュースに対する自分の考えなんかもすぐに発信できる。なるほど便利だなと思ってますよ」

 

浜さん、インスタグラムもデビューしませんか?

 

「まぁだツイッター始めたところですから、まずはツイッターを使いこなしてからですかね。いずれは考えんといかんな、とは思ってます」

 

高柳アナ、増田アナ、亀海さんとも短いけどご挨拶が出来て楽しいひと時。あっと言う間に2時間が経過して終了となったが、わざわざこのツアーに申し込んだ甲斐があったと思える素晴らしいイベントだった。 

 

4月25日 決戦当日

ついにやってきた決戦の日。

開場の時間から大幅に遅れて会場に到着。

 

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高揚感を抑えきれずに前夜祭で深酒してしまい、前座試合を見逃してしまう大失態!

 

マンダレイベイ・ホテルのロビーの中央の柱には試合のポスターが何枚も連なって貼られていた。ロビーに人が少ない。この時間は皆、イベンツセンターに集まっているんだろうか。

 

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ロビーを抜けて、しばらく歩くと試合会場のイベンツ・センターが見えてきた。急いでチケットを切って中に入った瞬間。 

 

ま・・・眩しい!!

 

ずっとテレビで観て来たラスベガスのリングに圧倒され、鳥肌が立った。

 

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この会場で行われたビックファイトの数々。

デラ・ホーヤvsトリニダード、バレラvsモラレス、タピアvsアヤラ・・あのリングが目の前にある。渡された席は前から3列目の1クラス席。最高の眺め。

 

ここでモンスターが戦うのか・・

 

セミ終了時で6割ぐらいだった客入りが、メインのセレモニー開始前で一気に満席になった。ラスベガスはメインの前で急に席が埋まる。聞いていた通りだ。全体の2割りぐらいが日本から応援に来たファンで、他は現地のファン。空席はひとつもない。ぎっしり埋まってる。凄い。

 

ひときわ大きな歓声があがった。歓声の先にはローマン・ゴンサレスがいる。WOWOW高柳アナの声が聞こえてくる。

「ロマゴンが観戦に来ている様です。2月にカリド・ヤファイを倒して見事な王座返り咲きを果たした試合は記憶に新しいファンも多いでしょう。フィニッシュは凄いパンチでしたよね~ジョーさん!」

「そうですね。ローマンの返り咲きにはロマンがありますよね」

「・・・・さぁ!いよいよモンスターinラスベガス、両選手のリングインです」

 

セレモニーが始まった。

カシメロが先にリングイン。

 

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場内の一角から「ジョンリル!ジョンリル!」とコールが沸き上がる。カシメロの応援団は皆、オレンジ一色でカラーを合わせて来ていた。

 

そして・・

 

ついにこの時が来た。

ジミー・レノン・Jrがモンスターをコールする瞬間。

 

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「ナオヤ!!

モンスターーーーーーー

イノウエ!」

 

ナオヤーーーーーーー!!!!!

 

地鳴りの様な大歓声が巻き起こる。

現地のファン達も皆、この日本産モンスターを見に来たに違いない。

 

日本の宝が花道に姿を見せた瞬間、現地ファンを中心にモンスターコールが巻き起こった。リングに上がり、右手を突き上げて声援に応えるモンスター。

  

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試合前、大和田常務はこう言っていた。

「真の世界的スターへの足掛かりとなる一戦」僕もそう思っていたけど・・これ。もう世界的スターになってないか?そう思える程の熱烈なラスベガスの現地ファン達の歓迎ぶりだった。

第1ラウンド  尚弥の世界

まずは相手の戦力データを取り込みながら、当たる距離を把握したい。ジャブで相手との距離感を計りつつ、ウォーミングアップのラウンドにしよう。

 

・・・何だろう。

・・・何かおかしい。

 

自分の動きに違和感を感じる。
カシメロの動きに想像以上のものはない。

 

真吾トレーナーの声が聞こえる。

「尚、良いよ!見えてる!」

 

 

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確かにそう思う。相手の動きはよく見える。
だけど自分の動きが、それだけが何かいつもと違う。


これまでとリングの広さは一緒なのに、すごく狭い場所で動かされてる感覚。何なんだ?この感じ。

 

さっきの左ジャブ。相打ち気味だっけど僕のパンチの方が一瞬速くカシメロに届いた。拳に感触が残っている。スピード負けはしてない。

 

カシメロが左フックを打つモーションが過去の試合より大きい。わざとか?ドネア戦で僕が左フックを貰ったのを見て、左フックへの反応を確かめてるのかもしれない。

 

また左フックが来た。
さっきより振りが鋭いけど、スピードはこれまでの相手と同じレベル。速いけど、ブロック出来るし、相打ち気味になっても先に当てられる。

 

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パンチ力はドネアに引けを取らない。

けど、想定の範囲内だ。

 

「パパー!!」

観客席から子供の叫び声が聞こえる。カシメロの子供?いや、リングサイドにも沢山のパパがいる。カシメロ陣営の誰かの子供かもしれないし、レフェリーの子供かもしれない。

 

ふと、明波の顔が浮かんでくる。

 

あ・・・なんだこの感覚。

全身を支配していた緊張感が少しずつ抜けていくのが分かる。

 

初のラスベガス。

ちょっと固くなってたのかな。

 

だんだん、世界が広くなっていく。
自分の動きがいつも通りになっていく。

 

1ラウンド終了後のインターバル。真吾トレーナーの言葉はその通りだった。

「前半ちょっと固かったね~。」

 

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「ちょっとね。でももう目が覚めたよ」

「どう相手。パンチある?」
「あるっちゃあるけど、想像通り」

「尚、見えてるから今のままで良いよ。上下に散らしていこうか」

「オッケー。案外、早いかもよ」

第2ラウンド  カシメロの世界

ドネア戦で左フックを喰ったせいか、
左フックには敏感に反応しやがる。

 

思った通りだぜ。おぼっちゃん。

 

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こっちの狙いは右だよ。
てめえが左を打つ瞬間、がら空きの顔面に右をブチ込むタイミングを狙ってるのさ。

 

いつもより動きが固くないかい?

今日のリングはいつもと違うだろう。

 

人気モンだねぇ。

現地ファンまでもが皆、ナオヤコールかよ。分かってたさ。いつだってそう。

 

俺はいつも敵地で戦ってきた。

アルゼンチン、ニカラグア、パナマ、イギリス、タイ、南アフリカ、メキシコ、日本。

 

ブーイングの嵐の中で、ボトルを投げつけられながら打ち合った事もあったぜ。そんな経験してねぇだろ?

 

お~っと。危ねえ。

 

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確かにおまえのパンチはすげえよ。
これまでの相手とはモノが違うわ。

 

ガード越しでも凄い衝撃だよ。

まともに貰ったらヤバそうだ。

 

だけど俺は貰わねえ。

先に当ててみせる。

 

生きるか死ぬかの戦い、ギリギリの戦場を勝ち抜いてきたんだ。わかるかい。モンスターさんよ。真のモンスターは俺なんだよ。

 

勝たせてもらうぜ。
今日勝って、俺はパッキャオになる。

第3ラウンド  ゲスト席からの世界

ドネア戦の序盤の様な緊張感溢れる鬩ぎ合いが続く中、ゲスト解説としてリングサイドに陣取った大和田常務のコメントが聞こえてくる。

 

「う~ん。この緊張感、素晴らしい。これぞチャンピオン同士の一戦。統一戦はこうでなくては。両者素晴らしい動きをしてますよ。さっきのラウンド、井上君の空振りに観客が沸いたでしょう。日本人選手の空振りパンチにラスベガスのファンが沸く!こんなシーンが今までありましたか?テニスで言ったらウィンブルドンの決勝で日本人選手の素振りで観客が沸き上がるという事ですよ!?」

 

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「カシメロは思ったより慎重に来てる印象ですが、それは当然でしょう。井上君のパンチを貰ったらヤバいという事は何発かブロックした時点でもう、感じてるはずですから」

 

ラウンド中盤、試合が打ち合いになってくる。カシメロの右アッパーが一瞬、井上の顔面を捉えたかに見えた。その後平然と打ち返し、右フックを相手のボディーに打ち込む井上。井上は紙一重でアッパーをかわしていた。

 

大歓声が沸き上がる。ドネア戦の序盤よりもパンチの交換が激しい。

 

井上の右フック!空振り。
カシメロの左フック!井上はブロック。

 

「ぬぅ~~~。目が離せん。目が離せん。目が離せん。目が離せん。目が離せん。目が離せん。目が離せん。目が離せん。目が離せん。」

 

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「これは目が離せん。目が離せん。目が離せん。目が離せん。目が離せん。目が離せん。目が離せん。目が離せん。目が離せん。これは一瞬たりとも目が離せん。」

第4ラウンド  実況席からの世界

 WOWOW実況席から高柳アナの声が響く。

「浜田さん!3ラウンド目どう見ましたか」
「え~。じったいきゅう、井上です。カシメロの動きをだいぶ見切って来た感じしますね。井上から打ちに出ましたけど、まぁだ前半ですから。このペースで削っていけば良いですよ。左ボディーが必ず効いてきますから」

 

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「そうですね!

ジョー小泉さん、いかがでしょうか?」
「私も井上の10-9ですね。もしかしたら1ラウンド目は採点が分かれているかもしれませんが、2ラウンド以降は井上ペースです」

 

その時、オーロラビジョンにカシメロの奥さんが映った。高柳アナが話を振る前に小泉さんは喋り始めていた。

「今映った女性、カシメロの奥さんですね。フィリピンでも美人と評判らしいです。カシメロもメロメロなんでしょうね」

 

「・・・・・はい。さぁ第4ラウンドが始まります。井上の右!カシメロ、ぐらつきました!」

 

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隣の席のルームメイト、河野さんが呟く。


「だいぶ、見切ってる感出て来たね。カシメロの出すパンチが分かってるみたいに避けてるよ」

 

そう見える。モンスターは自分のパンチだけが当たる距離感を完全に掴んでいる様子。バッティングで両者の頭があたり、レフェリーが両者に注意をした。試合が再開した瞬間、カシメロは素早くトリッキーな動きで右にサイドステップ。フックとアッパーの中間の様なワイルドな左の強打を井上に叩き込もうとした。そのパンチをブロックした井上は反撃のギアを一気に上げる。

 

距離をキープしながら動くのではなく、足を止めて6発のコンビネーションをカシメロに全弾命中させた。うち2初の左右のボディフックはカシメロの脇腹に深く突き刺さる。

 

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ボディーが効いたか?
カシメロの動きが一瞬、止まる。

 

日本からの応援団のボルテージが燃え上がる。

 「効いたぞ!尚弥行けーーー!」

 

日本からの2,000人の応援団を発信源にナオヤコールが沸き上がる。明らかにボディーが効いた様に見えたカシメロ。強打を振り回し、打ち返してきた。ここで引いたら一気に飲み込まれるのは分かってるんだろう。

 

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迫力満点の左右のフックを振り回し、ラウンド終了間際も大きな左フックをダブルで狙ってきた。

「カシメロ。左フック狙い過ぎじゃね?あんなの尚弥に当たらんよ」

 

確かにそう思う。でも"振りの鋭さ"と"角度"を毎回変えて打って来るのが怖い。井上は3ラウンドまで空振りさせる距離で戦ってたけど、このラウンドは自分からショートレンジで打ち合った。ブロックしてるし、パンチも見えてそうだから大丈夫だろうけどヒヤヒヤする。

 

行くならもっとじっくり弱らせて後半にラッシュすれば良いのに・・と思うけど、その作戦を試合前に公言していたのは井上本人なのだから。4ラウンドの時点でこれだけ近い距離で打ち合うという事は、相当な手応えと自信があるからに違いない。事実、カシメロの動きは明らかに鈍っている。

 

浜さんの声が聞こえる。「井上が自信満々で打って行ってますよね。これで良いと思いますよ。近い距離で打ち合っても、カシメロのパンチほとんど見切ってますからね」

 

ここで4ラウンドが終了。

第5ラウンド  カシメロの世界

井上に右ストレートを打ち込むタイミング。
ずっとそれをイメージして来た。

 

トレーナー陣の作戦と、自分の得意なパンチは一致している。
いつ、どうやれば井上に右をブチ込めるのか。

 

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いきなり打っても当たらねえ。
策なしに打ち合えば削られる。

 

左フックへの警戒は予想通りさ。
近い距離でも自信満々で振って来る様になったね。

 

右を打つのはこのラウンドだ。
これ以上ボディーを打たれたらキツい。

 

ドネアは右を当てて効かせた後、攻められなかった。俺は違うぜ。右を当てた後、倒れるまで打ちまくってやるよ。

 

このラウンドもどこかでヤツは必ず至近距離でパンチを集めて来る。

その時だ。

 

・・・きた。ここだ!

頼むぜ俺の右拳。

 

実戦もイメトレも数えきれない程やった。
あのイメージを思い出せ。

 

やったーーー!当たるぞ!!!

 

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イメージ通りだ!!
このまま全身の力を集中させて右拳を振り抜け!!

 

倒れてくれるかどうかは分からねぇ。
でも腰は落ちるだろう。

 

その後で、俺はヘマはしねぇ。
こいつを倒して、パッキャオになるんだ。

パッキャオに・・・

 

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・・・え?


なんでだ。
拳に手応えがねえ。

 

何が起きた。

暗い。

 

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何で真っ暗なんだ・・
イメージ通りだったのに。

 

右を打ち抜いてヤツの腰が落ちれば、追撃したのに。ドネアが逃した大きな魚を俺は逃がさねえのに。

 

ちきしょう。いてえよ。
頭が割れるみたいに、いてえよ。

 

神様。

 

俺、頑張ってるじゃないか。
俺はパッキャオになれないのかい?

 

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あぁ。懐かしい。
ゴミの川を泳いでた頃だ。

 

辛かったよ。
貧しくて、毎日が辛かった。

 

何度も死のうと思った日々。
ゴミの川で溺れてやろうかと思ったよ。

 

俺はあの泥沼から這いあがった。

ゴミの川で溺れそうだった男が、夢の海に辿り着いたんだ。

 

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気付いたら、周りの景色が変わってたよ。
ゴミが綺麗な魚に変わってた。

 

ベルトには人が寄って来る。嬉しかったよ。
ここで終わりたくねえ。

 

意識が薄れていくのが分かる。
眠れば楽になれるんだろう。

 

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でも、嫌だ。


俺はパッキャオになりてえ。

ここで終わるのは嫌だ。

第6ラウンド  観客席からの世界

ダウンしたカシメロ。

10カウントギリギリで立ち上がったところで5ラウンド終了。

ツアー仲間達のテンションは爆発。

 

「いや~凄い右だったね!」
「カシメロも右を狙ったんだよ。でも尚弥の方が速かった。」
「終わったと思った。よく立ったカシメロ」

 

倒れた瞬間もう立てないと思ったけど、カシメロは立ってきた。並みの選手なら立てないし、諦めるはず。

 

井上コーナーの様子を覗く。

真吾トレーナーの声が響いてくる。

「尚、最高の右だったよ!狙ってた?」
「向こうも狙ってたっぽいけどね、先に当たるのは分かってた」

 

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「ここで冷静にまたボディーから崩そう。

集中、集中!」
「オッケー。でも驚いた。

立てると思わなかった」

 

カシメロのコーナーを見ると、

陣営全員が意気消沈しているかの様。
何か声をかけている様には見えない。

頭を冷やして、足をマッサージしている。

 

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インターバルが終了。
6ラウンドが始まる時、カシメロ陣営のトレーナーが耳元で何かを言っている。カシメロは大きく頷いて胸元で十字を切る仕草を見せた。


一方、井上は対照的に観客席に向かって右拳を突き上げた。KO宣言とも受け取れるパフォーマンス。

 

両者同時にリング中央に飛び出した。

 

先にカシメロから打って出る。
左、右、左のコンビネーションは当たれば効きそうだが今の井上にタッチ出来そうなスピードは宿っていない。

 

もう、まとめれば仕留められるんじゃないか。

その空気が会場に広がるのと同時に、日本のモンスターはフィニッシュ・モードにスイッチした。

 

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ドネアを倒した右アッパーから左ボディーの黄金コンビが炸裂!

 

ダメージで腰を折りながらも、粘って打ち返すカシメロ。

打ちながらフラつくカシメロを見て、レフェリーの顔色が変わる。

 

「これ、早いレフェリーならもう止めるよ」

カシメロが意識朦朧としていくのがリングサイドから分かる。

 

"その時"は近い。

マンダレイ・イベンツセンターの観客は総立ちだった。

 

現地ファンのモンスターコールの上から日本のファンのナオヤコールが被さって、すぐに会場一体でのナオヤコールが始まった。それでも力を込めて右を振りかざすカシメロ。

 

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井上はカシメロの右をスウェーでかわして左右を叩き込む。

フィリピン人の目が泳ぐ。

 

この試合、初めてのクリンチに出たカシメロ。
井上はその動作を読んで、クリンチさせない。

 

体を預けて来るカシメロを突き放して
右、左、右の高速強打をアジャスト。

 

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ナオヤ!ナオヤ!ナオヤ!

 

高柳アナの絶叫が聞こえる。

「カシメロ棒立ちです!

カシメロ棒立ち!

手が出せなくなってきました!
井上の右!!左!!右!!」


「さぁ!その瞬間が近づいていることは
もう間違いありません!」

 

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「左フックーーーーーーー!!!

 

カシメロ2度目のダウン!!!

 

あ~っと同時にレフェリーが両手を交差しました!!

 

試合終了ーーーーー!!!」

 

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「モンスターinラスベガス!見事なKOで仕留めました!やりました井上尚弥、6ラウンドTKO勝ち!3団体の王座統一です!」

 

タイソン vs ホリフィールド初戦を思い出す様な高柳アナの絶叫実況。それ以上に観客達の熱狂は凄まじかった。スタンディング・オーベーションが起きている。

 

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カシメロは陣営に抱き抱えられてコーナーに戻ろうとしたが、悔しさの余りなのかグローブで顔をおさえながら、ロープ際で再び崩れ落ちた。

 

勝利者インタビュー

敗戦が決まった瞬間、カシメロ陣営は早々にリングを後にした。

 

勝利者インタビューの井上は眩しい。

 

憧れの初ラスベガスで会心の勝利の後でも、最初に発したのはファンへの感謝の気持ちだった。

「日本から沢山の人が来てると聞いてましたが、まさかこんなにも大勢ここまで応援しに来てくれるなんて。本当にありがとうございます!皆さんの声援で、モンスターコールが途中からナオヤコールに変わっていくのが分かりました」

 

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現地ファンの人達も大喜びしている様子を見て、自分が戦ったわけでもないのに誇らしい気持ちになってくる。この夜のラスベガスは完全にナオヤ・イノウエのステージだった。

 

ルームメイトの河野さん曰く
「全てのスキルステータスで尚弥が上で、試合もそのままの展開になったパターンだね。大和田常務の予想通りかも。でもカシメロのファンも増えるんじゃないか」

 

その通りだと思った。実質的に勝負の決め手となった最初のダウン。あの右ストレートはタイミング、パワー、スピードで上回ったから先に当てられたし、あの攻防が起きる前から井上はそうなると確信して打ち合っていた様に見えた。

 

今、一番したい事は何ですか?と聞かれた井上はこう即答。

「息子に会いたいです。実は1ラウンド目、思い通りに体が動かなかったんですよ。でも明波の顔が浮かんで来たら、世界がスッといつもの景色に変わったんです。そこからはほぼ思い通りの展開で進められました」

 

そしてファンが求める。次の展開。

「今日でWBOも獲ったので3団体統一しました。ここまで来たらバンタム級で4団体統一を狙いたいです。ウバーリvsドネアの勝者と戦う事になりますが、どっちが来ても勝てる自信はあります」

 

精悍さ溢れる顔つき。

満足感はそこまで感じない。もっと、もっと俺はやれるんだという自信と強さへの探求心が体中から溢れ出ている。

 

河野さんが漏らす様に呟いた。

「眩しいな。尚弥って、眩しいよね」

「ですね。現地まで観に来て本当に良かった」

 

憧れ、夢、欲望・・

今、全てを叶えてくれるボクサーじゃないだろうか。27歳。これからが全盛期。

 

ツアーメンバーも口々に叫んでる。

「尚弥強かった!日本の誇り!希望だよ」

 

そう。井上尚弥は日本の誇りであり宝であり夢。希望の象徴なんだ。

 

WBA・IBF・WBO世界バンタム級王座統一戦

井上尚弥 vs ジョンリル・カシメロ

井上が3団体の王座統一。

TKOタイム 6回1分12秒。

試合翌日  尚弥の世界

試合翌日の朝は良い目覚めだった。

拳も痛めてない。

スマホでSNS、ニュースサイトを見ると各種メディアで試合が絶賛されていた。

 

ハイライトシーンの映像を見ると我ながら良いラッシュだと思う反面、試合全体で考えると改善点や課題はいくつか見つかっている。次の試合は7月か8月かな。取りあえず暫らくゆっくりしよう。

 

記者会見を終えて、宿泊先のホテルに戻り家族へのお土産を選んでいた時。

偶然、数軒先の店から出て来るカシメロを見つけた。

 

声をかけようか迷う自分がいる。
どうしようか。

 

決着がついた直後に相手陣営がすぐリングを降りてしまったので試合後の挨拶をしていない。聞くところによると、まだ戦えたのにレフェリーはストップが早いと納得してないかの様なコメントをしたというのも耳に入っている。

 

ここからカシメロがいる場所まではかなり距離がある。向こうが気付く前に立ち去る事も出来る。


どうしようかな・・

その時、後ろから声をかけられた。

 

「すみません、井上選手ですよね?」

現地観戦に来てくれた日本からのファンだった。握手と写真撮影を終えたところで、自分の名を呼ぶ声が聞こえる。

 

「イノウエ!」

振り向くと、カシメロが歩いて来ていた。
その表情は穏やかだった。

 

「Good  Fight!」
そう言って右手を差し出してきた。

 

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「Thank you!  Good Fight!」

会話はその一言だけだった。

 

たったそれだけの短い会話だけど、それを言うためにカシメロはこの長い距離を歩いて来てくれたのか。去りゆく彼の後ろ姿に、悲壮感は感じない。

 

仲間と合流したカシメロは、楽しそうにラスベガス道案内の掲示板を見ていた。カジノという言葉を発しているのが聞こえて来る 。

 

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「まぁ負けたけど、キャリア最高額のファイトマネーは入った。カジノで一発、運試しでも楽しもうか」そんな会話でもしてるのかな。

 

スマホに真吾さんからのLINE通知が来た。

「飛行機の時間、前倒し出来たよ」

 

よし。

その前に拓真と浩樹とカジノに行く事になってる。待ち合わせ場所に行くと、2人はもう来ていた。

 

「遅いよ尚弥様!

拓真きゅんは15分前から来てるからね」
「ごめんごめん!さぁ。行こうか」

 

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浩樹が楽しそうに言う。

「楽しみ~!

夜までがっつりカジノで遊びたいよ」
「長居はしないよ。

飛行機の時間を前倒したから。」
「え!そうなの?」
「うん。はやく明波に会いたくて」

 

前回カリフォルニアで試合をした時は、せっかくだから少し観光もしたいなと思ったけど・・今はそれより大切なものを優先したい。観光はまたいつでも出来るだろうから。

 

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さあ行こう。
明波が待ってる。 

いつか、時空を超えて

ボクシングファンになって30年弱。

人生初めてのラスベガス。

これ以上ない最高の観戦ツアーだった。

 

成田空港でツアーメンバーと別れて電車で家までに帰る途中、電車の中のサイネージで井上勝利のニュースが流れているのを見ると、やはりあれは現実だったんだと実感。

 

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SNSではフィニッシュシーンの映像が既に何千万回と再生され、その数字の伸びに今回の試合の影響を大きさが現れている。WBSS優勝を経てのラスベガスのKOでの王座統一。最高の瞬間に立ち合えた喜びの余韻は今も消えていない。

 

帰宅すると嫁も娘も寝ていた。娘は5日ぶりの再会を楽しみに待っていてくれた様だけど帰宅が遅くなってしまったので明日、埋め合わせをしないと。

 

さっそく録画したWOWOW中継盤をフルラウンド再生し試合を振り返る。その後、YOUTUBEで井上カシメロ戦の著名人のリアクションを集めた動画を見つけた。

 

その中で、パッキャオが井上カシメロ戦の感想を聞かれこう答えている。

 

「統一戦に相応しい素晴らしい試合だったよ。敗れたカシメロの健闘を称えたい。誰もが最初のダウンで諦めると思ったはずだよね」

 

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「あの状況からイノウエに立ち向かって行くのは、何か相当な強い思いを持ってないと出来ない。彼にはきっとまた、次のチャンスが来ると思うよ」

 

その後、パッキャオは面白い発言をした。

 

「イノウエは本当に強い。ドネア戦の時より更に強くなっている。来年にはSバンタム級に上げる可能性が高いらしいね。私もかつてSバンタムで戦っていたから感慨深いよ。時空を操れるなら、イノウエとSバンタム級で戦ってみたい」

 

モンスター vs パックマン。

それはきっと、全世界のボクシングファンが願う究極ドリームマッチ。

 

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現実には起こり得ないその試合を、僕は心から観たいと思った。

 

井上尚弥 vs マニー・パッキャオ。

 

いつの日か、そう。

時空を超えて。

 

 

 

 

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