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「3.11」セレス小林が世界を獲った日。 

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今日、3月11日はあの日。

セレス小林vsレオ・ガメス。
2001年3月11日の横浜アリーナ。

人生で初めて日本人ボクサーの世界タイトル奪取の現場に立ち合えた日。最高の瞬間を見せてくれた男の名は小林昭司。サラリーマンボクサーとして二足の草鞋で世界を目指した彼のリングネーム「セレス」は勤務先の結婚式場の名前からとっている。

「自分、プロボクサーになれますか?」

この質問から始まった彼のボクサー人生。
世界初挑戦でマルコム・ツニャカオ相手に悔しいドローで王座を逃した小林。2度目の世界挑戦の相手は戸高秀樹の顎を砕き4階級制覇を果したベネズエラの英雄レオ・ガメス。人生を懸けて挑んだ大舞台で見事に夢を掴んでみせてくれた。

勝利者インタビューで「今の気持ちを一言!」と聞かれた時の彼の言葉は、19年経った今も忘れられない。そして、試合後の帰り道で過ごした"眩しい時間"あの感動の日の記憶を辿ります。

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迷子の女性ファン

試合当日。

横浜アリーナの正面玄関で友人と待ち合わせていた僕は、新横浜駅の改札を出てアリーナ方面に向かう道を歩いていた。

この道を歩くのは畑山vs坂本戦以来、半年ぶり。半年前の激闘を思い出しながら信号待ちをしている時、女性に声をかけられた。

「すみません。横浜アリーナはどっちですか?」

自分の母親と同じぐらいの年齢の女性で、手にはかなり大きな荷物を持っている。僕は現在地からアリーナまでの道順を丁寧に説明した。

「わかるかな~。方向音痴なうえに横浜、初めてなんです」

「だったら入口まで一緒にいきましょうか」

「良かった!お兄さんもボクシング観に行くんですね」

「ええ。今日の試合は楽しみですよね」

重そうな荷物が気になる。持ちましょうかと言おうと考えたけど、きっと遠慮するだろうから言わないでおこう。今日は誰の応援に行かれるんですか?と聞いたら彼女は嬉しそうに話してくれた。

「私、セレス小林応援団のメンバーなんです。今日は1,500人も集まるんですよ!凄いでしょう」

「1,500人!それは凄い大応援団ですね」

この先に横浜アリーナがある事を示す標識が視界に入ると同時に、左手にアリーナが見えてきた。

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「お兄さんも小林君の応援?」

「はい。前座に出る西岡も好きですが、今日の主役はセレス小林。勝機アリですよ」

彼女はセレス小林を応援する事になったきっかけや、今日の試合への熱い思いを話してくれた。

「日本チャンピオンになった時からファンなんです。でも正直、本当に世界挑戦まで来れるとは思ってなかったの。今はもう、彼の夢は私達みんなの夢なんです」

アリーナ正面に到着。開場したばかりのタイミングだったので正面玄関は多くの人で溢れかえっている。

「本当にありがとうございました。道案内してくれなかったら、きっと今でも迷ってたわ」「見届けましょう!世界奪取の瞬間を」

「きっと勝つ気がしてるのよ。ではまた、どこかでね」

彼女はそう言ってアリーナに入っていった。試合前にセレス小林応援団の一人と話せた事で、一般ファンのこちらの気持ちも高揚させられる。

待ち合わせた友人とチケットを切り会場にIN。入口で配られたパンフレット。

この日は小林の世界戦以外にも注目カードが揃っていた。

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・西岡の世界前哨戦
西岡利晃 vs サムエル・ベントゥーラ

・打撃戦必至の日本タイトルマッチ
木村鋭景 vs 雄二ゴメス

・小林の世界再挑戦
セレス小林 vs レオ・ガメス

日テレ船越アナが西岡をトシオカとコールしてしまう"伝説のトシオカ事件"と前評判通りのナイスファイトとなった木村ゴメス戦。そしてセレス小林の最高試合。現地観戦した人もテレビで観た人も合わせ、自分を含む多くのボクシングファンにとって忘れられない日となった。

戦前の試合展開予想

レオ・ガメスはこの時で37歳。

2000年10月に戸高秀樹に挑み、タフな戸高の顎を粉砕してまさかのKO勝ち。ミニマム、ライトフライ、フライ、スーパーフライ級の4階級を制覇。これまでガメスと世界戦を戦って勝利した日本人ボクサーはいない。

横沢健二、八尋史朗、戸高秀樹。3人ともKO負けで特に横沢と戸高は悲惨な傷を負わされている。戸高の勝利は固いと予想していた僕は、初回からミニマム上がりのガメスの空振りパンチの風圧に驚きを隠せなかった。

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叫び声を上げて自分を奮起させながらも、被弾後に少し間を置いてから倒れ込んでいく戸高の悲壮なダウンシーンは壮絶だった。

ガメスの強味は軽量級離れした一発の威力。華麗なテクニックや12回を通じて相手をコントロールする様なポイントメイクを見せる選手ではない。自分の得意なKOのパターンにどこかで持って行けば良いというスタイル。キャリアが厚いだけあって効いた時の誤魔化し方も上手い。

一方、セレス小林はハードパンチャーではなく頭脳的なボクシングが持ち味のサウスポー。これまで新人王や最速KOなどの派手なタイトルとは無縁でデビュー戦も黒星スタートだった。3度目の挑戦で日本王座を奪取後に4度防衛しており、その中で着実に自分のスタイルを形成していった様に思う。名古屋のスーパーホープ、石原英康の挑戦を受けた時は石原が勝てば辰吉の記録を上回る3戦目での日本タイトル奪取という事で注目された一戦だった。その石原戦で小林は貫禄の勝利を見せている。

1発で仕留める貫通力は無くとも相手を研究し尽くし、長いラウンドを想定して着実に自分のペースに持ち込む安定感は国内では頭ひとつ抜けている。仕掛ける時の国際ジム伝統のショート連打は試合の度に精度が上がり、キャリア前半は判定勝利多かったものの後半ではTKO勝利が増えてきた。

2000年8月。ツニャカオに挑んだ世界初挑戦。この時の戦前予想は小林不利の声が多かった。

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ツニャカオがメッドグンからKOで世界奪取した試合のインパクトが強烈だったのと、国内では敵無しの小林でも世界のリングでは突出した武器があるかというと、これだ!というものは無いのではないか。簡単には負けないだろうが勝ち切れるイメージもしにくいというのが正直なところだった。結果は大接戦のドローで、接近戦に持ち込んでからの終盤戦ではツニャカオをダウン寸前まで追い込み、世界王者と同等の力がある事を証明した。そして今回の再チャレンジ。

28歳の小林と37歳のガメス。

戦前の予想は小林が有利と言われていた印象は無いけど、不利とも言われていなかったと思う。僕はセレスの勝機は十分にあると期待していた。序盤からガメスの強打を貰えば危ないが、小林はガードが高くブロックも上手い。戸高の様な貰い方はしないはずだし、判定まで想定した後半勝負の作戦で行くはず。

ガメスは実績が示す通り申し分なく強い王者だけど、挑戦試合の時の仕上がりと比較して防衛戦でのパフォーマンスはいまひとつな印象。これまでひとつ下の階級で戦ってきてKO率が高いワケでもない小林の事をナメきてくれるのでは?という都合の良い想定と、家族の為に人生を懸ける小林の決意が交差した時、小林が勝利する試合展開は十分に現実的なパターンとしてイメージ出来た。

人生最大の挑戦

小林の入場。

1,500人の大応援団を発信源に熱いセレスコールが巻き起こる。応援団の声に共鳴する様に、アリーナに集まった全ファンの歓声が注がれる。

「小林、今日獲れよ!」

「セレス頑張って!」

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リングインしたガメスはテレビで観るよりも小さく見える。4階級制覇の英雄。試合が始まればパンチの伸びで小さく見えないに違いない。小林昭司の人生を懸けた大勝負のゴングが鳴った。

初回。

立ち上がりから小林の気迫がガメスを圧倒。

プレッシャーをかけて下がらせ、左ストレートが王者のボディーに命中。顔面への左ストレートも鼻っ柱を霞める。

小林のパンチが当たる。ガメスの動きが悪いワケじゃない。小林にとって相性が良い相手の様に感じて、初回が終わった時にこの試合いける!と思った。

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2回。

ガメスは小林の勢いを止めたい。

前進して強打を振り回してきたけど、小林は相手のパンチが見えている。ダッキングでガメスの左フックをかわして左右のボディーを叩き込んだ。

3回。

ガメスが得意の右アッパーを突き上げてくる。戸高戦でも炸裂させた貫通力抜群の右アッパー。このパンチへの警戒をイメージして練習して来たという小林はしっかりと対処してみせる。アッパーが当たる距離に立ち続ける事なく、接近したら必ず先にボディーを攻める。

足がないガメスは小林の動きについていけない。この回の終盤、ボディーへの左フックで王者の体がくの字に折れた。

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4回。

この試合のラウンド支配のパターンが決まってきた。ラウンド前半はガメスが強引に出て怖いパンチを振るけども、中盤から後半で完全な小林ペースになるパターン。空を切るガメスの右アッパーは貰えば効きそうだけど、今日の小林からはこのアッパーを貰ってしまいそうな危機感は感じない。

ガメスの表情を見ると、狙い澄まして打つというよりは苦し紛れに突き上げている様に感じる。再三ボディーショットを決めた直後、小林がショートの連打で纏めにかかった。ここで引いたら一気に飲み込まれる・・ガメスはきっとそんな思いだったはず。
必死の形相で打ち返して来たけど、的中率は完全にセレス小林。王者の鼻から血が噴き出した。

5回。

初めてガメスのラウンド。

ガメスが攻めた後は中盤から小林が巻き返すはずが、この回は手数が減ってしまう。終盤は一進一退の打ち合い。小林はロープ際から脱出する為に、この試合初めて自分からクリンチいった。王者の右を貰って小林の動きが僅かに鈍る。

友人が叫ぶ。

「引くな小林!ここで引いたら一気に来るぞ!」小林は冷静に自分の距離をキープしながらラウンド終了。

6回。

5回に掴んだ流れをそのままに更にペースを引き寄せようと躍動するガメス。勢いよく前進してくる。小林もここで流れを渡すかとショートの連打で対抗。挑戦者の左ストレートがカウンター気味にヒット!

一瞬怯んだ表情を見せるガメス。

終了間際にも力を込めた左を王者にブチ込んで、5回に奪われた試合の流れを完全に取り戻した。

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7回。

ガメスのスピードが目に見えて落ちて来た。

小林はもう、パンチを出せば当たるというぐらいの一方的な展開になって来ている。「決めろ小林!」期待通りの小林優位の試合展開に、応援団の歓声も一層と激しさを増していった。

その歓声に応えるかの様に、王者のストマックど真ん中に左ボディーを差し込み、ラッシュする小林。

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8回。

これまでラウンドの前半は元気だったガメスが、この回からは苦しそうに口を開けながら応戦。

見るからに苦しそうで、小林が打つたびに大歓声。勝てる。勝てるぞ。いけ小林!新王者誕生の瞬間が間近に迫ってる。きっと今日は「その日」になる。

時おり打ち返してくるガメスの反撃にはまだ十分に殺傷能力が宿っている為、小林も打ち続けてはいられない。

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9回。

ガメスの左が小林の右顔面を捉えた。
動きが止まる小林。

小林も打つ返す。両者共にクリンチはしない。ガメスも打ち返す。好勝負。ガメスも4階級王者の意地を見せる。

そして運命の10回。

開始からガメスの猛攻!力を込めた右で起死回生を狙ってきた。小林は冷静にガメスの打ち終わりを狙っている。ひとしきり王者の猛攻を凌いだ後、ボディーで動き止めて覚悟を決めたラッシュ。

それは小さな左フックだった。

カウンター気味にガメスを打ち抜いた。

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ガメスはそのまま、前のめりにキャンバスに倒れ込むダウン!!

立てるか?
立ちそうだ。立った。

立ち上がったけどフラついている。
再開後に小林のラッシュでTKO出来る!

けど試合が再開される事はなかった。

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ガメスが酔っ払いの様にフラついた瞬間。

レフェリーは試合を止めた。

試合終了。

小林昭司が世界を獲った。

「やったぁあああああああああああ」
「決めたぁあああああああああああ」

渦巻く熱狂。場内総立ち。

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三浦トレーナーが泣いている。
会長が泣いている。

小林の奥さんが泣いている。

新王者の雄叫びが聞こえる。

「やった。やったぞ!」

三浦トレーナーの叫びが聞こえる。

「よくやったよ!!」

その場の全員が立ち上がり、拳を突き上げ絶叫していた。きっと世界王者誕生の瞬間に立ち合えるに違いない。そう思ってたけど・・・実際に体感するその衝動は想像以上だった。ボクシングファンとしてこのうえない至福。

そして勝利者インタビュー。
ベルトを巻いた今のお気持ちを一言お願いします!と言われた時の新王者の言葉が忘れられない。きっと彼の心からの本音だったと思う。

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「いやぁ……俺が世界チャンピオンになれるなんて。」

4階級制覇の強豪王者。

レオ・ガメスを文句なしのTKO。

あなたは世界を獲ったんだよ。

「チャンピオンだよ小林!」
「おめでとう小林!」

ドロー判定に泣いた世界初挑戦から7ヵ月。決死の覚悟でチャンスをモノにした。しかも日本人ボクサーが誰も勝てなかったガメスをTKOで破っての奪取劇にファンの興奮は収まらない。

黄色一色のセレス小林・大応援団が巨大モニターに映った。会場まで一緒に歩いたあの女性もあの中にいる。あの大きな荷物には応援グッズの何かが入ってたのだろうか。

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別れ際の言葉を思い出す。

「きっと勝つ気がしてるのよ。ではまた、どこかでね」

最高の試合での会心のベルト奪取劇。あの応援団の輪の中で、歓喜に揺れているに違いない。

愛娘を抱いて撮影ラッシュに応える小林の笑顔。今、セレス小林は幸せだろう。

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素晴らしい瞬間に立ち合えたファンも皆、全員が幸せだった。夢を叶えたリング上でのセレス小林。ずっと見ていたかった。

日本最初の世界王者

新王者誕生の瞬間に立ち合える。

こんなに素晴らしい事があるのか。

まだ高揚感が冷めないまま帰路につく。昼の時間帯の興行だったので、まだ外が明るい中、乗った電車の中でとんでもない事が起こった。

立って窓の外を眺めていると、座席が一人分空いた。そこに座った瞬間、目を見開いた。

まさかの出来事。

向かい側に白井義男氏が座っている。

日本人初の世界王者、白井義男。

まだテレビ解説をしてた頃だったので、顔を見てすぐにわかった。おお~白井義男だ!と思ったけど周りは気づく事もなくシーンとしている。電車が次の駅に着いた時、白井さんの右隣に座っていた人が下りていった。白井さんの隣が空いている!

僕は光の速さで白井さんの隣に座った。この時の動きは我ながら"ノーモーション"こんなチャンスは滅多にない。次の駅で降りてしまうかもしれないから声をかけよう。

「あの・・すみません」

少し驚いた顔でこちらを見る白井さん。

「白井義男さんですよね?」

驚きから満面の笑顔に変わっていく様子は、まるで桜が咲くようだった。窓からの春の光が日本初の世界王者を照らす。

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「はい。そうですよ。白井です」

「握手してください!」

にっこり笑って手を差し出してくれた。

「よく僕だって分かりましたね」

「ボクシングファンなので、すぐ分かりました」

夢のように穏やかに流れた時間だった。何分ぐらい話しただろう?きっと10分以上は会話してたんじゃないだろうか。

白井さんに聞かれた事を今でも覚えている。

「あなたはいくつ?」

「あなたのお父さんはいくつ?」

僕が白井さんに聞いたことも覚えてる。

「今日のセレス戦、勝てると思われてましたか?」
「辰吉が復帰したいと言ってる噂ですが、どう思いますか?」

日本人として初めて世界王者になった人。
日本ボクシング界の最初の偉人。そんな人とこうして会話が出来るなんて。彼が世界王者になった1952年5月19日。僕のオヤジもまだ生まれてなかった。でも5月19日が"ボクシングの日"に指定されているのは知っている。日本のボクシングが初めて世界を極めた記念日なのだから。

「タド・マリノに勝った試合、ビデオで観ましたよ」

「あの時はねぇ。後楽園球場に4万人も集まったんだよ」

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「後ろの方の人はもう、こっちからも全然見えないの。すごい景色でね」

白井さんの優しい声を聞きながら、モノクロ映像で観た試合の映像を思い出す。カーン博士との思い出話までご本人から聞けた。眩しい時間。

楽しい時間がずっと続く事はなく、僕が降りる駅に電車が到着してしまった。白井さんが降りる駅も、もうすぐらしい。

「ありがとうございました!お話し出来るなんて、嬉し過ぎました」

「こちらこそ。ありがとうね」

ホームに降りた後、白井さんが乗った電車が動き出すのを見つめながら不思議な感覚になった。今起きた事は現実だったんだろうか。

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白井義男さんは2003年12月26日に80歳で天国へ旅立っている。という事はこの日は78歳だった事になる。78歳の白井義男さんと夢のサシトーク。きっと世界で僕だけが経験できた事に違いない。

なんて日だ。
初めて世界タイトル奪取の瞬間に立ち合えたと思ったら、その試合の帰りに日本初の世界王者とこんな時間が過ごせるなんて。ボクシングというスポーツに魅せられ夢中になってからの日々の中で、色々な意味で特別な時間だった。

最初の世界王者の言葉

帰宅後、録画再生でフルラウンド振り返る。

鈴木健アナの実況で「新王者誕生!」と言われると辰吉シリモンコンを思い出す。縁起の良い実況アナだな~。

テレビ画面を見ながら会場での興奮が蘇ってくる。つい数時間前のあの余韻がまだ残っている。そして試合後の電車の中での出来事。不思議で眩しい時間だった。

19年経った今。

鮮明に思い出す白井さんの言葉がある。

あの日、小林ガメス戦の前座で試合をした西岡利晃。1年前の世界初挑戦でウィラポンの厚い壁を突破出来ず、ファンの中には落胆の声を隠さない人もいた。僕はホープ時代からずっと西岡が好きで変わらず期待していたので、白井さんが西岡をどう思ってるのか聞いてみたかった。

西岡は世界チャンピオンになれますかね?

そう聞くと、優しい目でこう答えてくれた。

「なれます。彼はきっと、強いチャンピオンになると思います」

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コメント

コメント一覧 (4件)

  • セレス小林さんといえば、わたしの中でいつも冷静で分かりやすい解説をしてくれる方。
    でも試合は観たことがないチャンピオンの一人です。
    そんな強豪から世界を獲っていたなんて、3月11日がそんな日だったなんて存じ上げませんでした。
    白井義男さんもそうです。
    もちろん凄い方なのは知っています。
    もし同じシチュエーションがあったなら、Tokkyさんと同じく、迷うことなく、騒がず静かにお声を掛けると思います。
    掛け替えの無い、幸せな時間だったのが胸に深く伝わります。
    【ボクシングの日】が誕生日のわたしも、涙が出そうな記事でした。

  • みあかさん、ありがとうございます!
    おおお!
    ボクシングの日がお誕生日だなんて、まさにボクシングを見る為に生まれてきた?と言ったら言い過ぎでしょうか^^
    ある意味とてもうらやましいです。

  • ガメスのトランクス、腹巻かよってくらい分厚くて胸下まであげてるけど、ボディに自信がないって裏返しなのかな。

  • G3さん、ガメスのトランクスは本当に位置が高いですよね。きっとそうなのでは?と思います^^

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