書籍紹介

井上尚弥の著書「勝ちスイッチ」の感想とおすすめポイント

書評シリーズ第1回はこの本。
井上尚弥「勝ちスイッチ」です!

 

 

最初に僕がこのブログを書く目的を明確にしておきますね。まだ読んでない人に素晴らしさを伝え、読みたいと思って貰う事が目的です。内容を網羅し過ぎるとネタバレになってしまうので多くは書けませんが、全277ページの中から興味を惹かれた部分を9項目抜粋して感想を添えていく流れにしてみました。

もう既に読んだ方は、こういう感想もあるんだな~ぐらいに捉えていただければと思います。

 

 

「僕は天才ではない」

「天才」と言われる事に対しての率直な思いが書かれています。誰もモンスターが生まれ持った才能だけで勝ち進んできたとは捉えてないと思いますが、メディアはどうしても大きな活字で報道しがち。父・真吾さんの「尚の血の滲む努力を天才の一言で片づけないで~」的なコメントもテレビのドキュメントで流れていましたね。

 

あくまでも人よりも先に本格的な練習量に裏付けされたボクシングを始めていたというアドバンテージあっただけで、自分は天才と呼ばれる程のセンスは生まれ持ってないと捉えているそうです。

 

そもそも天才の定義は何か?「何もしてないのにできる人。努力しないで才能をリングで発揮できる人」そう定義した場合の具体名として、辰吉丈一郎さんをあげています。4戦目で岡部繁さんから日本タイトルを取った映像を見ると、まさに天才だと。

 

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もちろん辰吉さんが努力せず才能だけで試合をしたという意味ではなく”まだキャリアの浅い時期にあんな凄い動きが出来る人こそが天才だ”というニュアンスです。

 

大事なのは生まれ持った才能ではなく努力するプロセスであり、その肝心な”何をどう努力するのが大切だと考えているのか?”という井上尚弥の核を作る部分がとても具体的に書かれています。

感想

天才の定義を「努力しないで才能を発揮できる人」としたなら、書かれている通りで納得です。ただ天才の定義って難しいですね。僕は高校時代にボクシング部でしたが、部の先生が言っていた”自分に一番マッチする努力の方向を見つけるセンスがある人が天才”という言葉を今も印象強く覚えています。どう定義するかで何が正解とかはない世界。

 

僕みたいな熱烈な辰吉世代のファンからしたら、モンスターの様な現在のPFPトップクラス選手が天才の事例として「岡部戦の辰吉さんの動きこそ天才」と言ってくれた事が超超超嬉しい!井上ファンだけど辰吉さんの現役時代には詳しくないという20代のファンは沢山いるのですから、辰吉ファンのおっさんからしたらこういうところもジワジワと嬉しさが込み上げるのです。

「他人に興味がない」

他人に興味がないそうです^^
何となくそんな感じが見て取れていたので意外ではありませんでした。テレビ局から「会いたい人がいれば対談企画をしたいのですが?と言われても、失礼ながらすべて断っている」らしいです。

 

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何か聞かれれば答えられるけど、他人に興味がないので対談方式になってしまうと自分から聞く事が頭に思い浮かばない。そんな自分の性格が嫌いではないとの事。人は人。自分は自分。

 

ボクシングの書籍に付き物のハングリーな物語も自分にはない。「リング上のパフォーマンスがすべて」というポリシーにも繋がるところがある”彼の素の性格”について飾らず率直に書かれています。

感想

僕の様なただの一般会社員が、恐れ多くもこう思いました。「自分と似てる!他人への興味の無さ。わかる~」いやいや意味するところとレベル感は全然違う話ですけどね^^

 

井上尚弥&藤原竜也の対談企画でも、モンスターから藤原さんに質問する回数より藤原さんからモンスターに質問する回数が多いな~とファン目線で感じてました。それで良いです。自然なことです。

 

幼少期からボクシングをやってきたトップ選手が全く別業種の人と対談して、バラエティに富んだ素敵な質問をいくつも投げかけていたらそっちの方が違和感があります。

「リング上のパフォーマンスがすべて」特に彼の場合すべてはそこに繋がっているという納得感があります。

初めて負けた時の真吾さんの言葉

全編を通して父、真吾さんが苦労して自分たち兄弟を育ててくれた事に対する感謝の気持ちと人間・井上真吾を尊敬する気持ちが具体的なエピソードと共に書かれています。

 

小学生の頃にギャンブルが原因で両親が離婚、苦しい少年時代を乗り越えて「明るく成りあがる」という思い込め20歳で明成塗装を立ち上げた真吾さん。4畳半と6畳の部屋で借金暮らしから新婚生活が始まりそこで尚弥、拓真は誕生します。

 

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そこから一軒家を建てて仕事とトレーナー業を両立していく中、様々なトラブルに見舞われながらも信念を曲げずに生きる井上真吾という一人の人間の物語も垣間見えますし、モンスターとしばらく口も聞かない程のケンカをした時の話も詳しく書かれています。

 

一番心に残ったのはモンスターがアマチュアの試合で初めて負けた時の話。高校8冠という目標に真剣に挑んだ家族に心から申し訳なく思う敗戦だったと。サポートしてくれた家族みんなの期待を裏切ったと思ったモンスターは、真吾さんの顔を見るなり涙が溢れ「ごめんなさい。ごめんなさい」その時、真吾さんがどんな言葉を息子にかけたのかとてもリアルに書かれていて、僕はその言葉がとても好きです。ぜひ本書を手に取って、前後の文脈と共にじっくり読んで欲しいシーンです。

感想

メディアに映る真吾さんの理路整然とした喋り口調を聞いていて、頭の良い人だろうなというイメージでした。なので昔の凄い苦労話は意外というか、とんとん拍子に人生が好転した人の様に勝手に思っていたので・・そんな苦労をされていたんだなぁと。

 

真吾さんとモンスターが親子喧嘩した後、お互いの思いをしっかり言葉にして仲直りする一幕があるのですが、そのシーンを読んで今の自分にも必要な事だと思いました。血が繋がったこれほどの親子でも、認識齟齬がない様にお互いの気持ちを言語化して会話しているのだから・・他人同士の夫婦は、もっと会話しなきゃな~と笑

大橋会長の手腕

大橋会長がつけたモンスターというニックネーム。実は最初は嫌だったそうです。井上尚弥で良いのに・・と思ってたと。大橋会長の考えでは「最初から日本を飛び出して海外で活躍することを念頭におき、海外で浸透しやすいニックネームを」という理由でモンスターにしたとの事で、実際に今そうなってるから凄いという話。

 

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実際に海外でモンスターの呼び名は定着していき、ナオヤ・イノウエよりもアメリカでの知名度は”モンスター”で高まっている事を実感した時「やはり先見の目がある大橋会長は只者ではない」そう思ったとの事。 

感想

最近、ボクサーのお店レポを書く為に色々なお店を回ってます。大橋ジム初の世界王者、川嶋勝重さんにもお会いして話してたりしてるのですが、誰と会っても大橋会長の話しは頻繁に出て来ます。元教え子、元後輩、元先輩・・様々な角度から聞く大橋会長の凄いところをまとめるとこの3点です。

 

①ハンパなく世渡り上手
②先見の目をもってる
③発想の柔軟さをもってる

 

特に③について思うのは父親が専属トレーナー希望というこれまで無かった形を受け入れた事ですね。ボクシングファンなら既に広く知られた話だと思いますが、井上家がプロ転向する時の所属ジムとして、他の大手ジムも候補だったんですよ。「専属トレーナーとして父が一緒」というこれまでにない枠組みに他の大手ジムが迷う中、受け入れて手をあげたのが大橋会長だったのです。

大橋会長。やはり只者ではない!

ドネア戦への思い

この本が発売されたのはドネア戦よりも少し前です。モンスター曰く、試合中にわざとガードのうえを打たせてパンチ力を計るという作業を時折実行するけど、やばいと感じるパンチャーはこれまではいなかった。だけどおそらくドネアの左フックをガードの上から受けて「これはいけるな」とは思わないはずだと。

 

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はやくそれを感じてみたい!というワクワク感に始まり、ドネアと試合が出来る喜び&どんな準備をしてどう戦うべきと考えているか?が非常にリアルに書かれています。この本はドネア戦の前に書店に並ぶけど、そういうプレッシャーも好物だとも言っています。

感想

仮にドネアに負けていたら、この「勝ちスイッチ」の売り上げは減ったのでしょうか。1994年12月4日の伝説試合。辰吉丈一郎vs薬師寺保栄。辰吉さんは波瀾万丈という著書を試合前に完成させ、勝つという前提の元に発売日を試合翌日にしてました。試合は薬師寺さんの勝ちでしたが、本はキャンセルどころか爆売れしたと聞きます。

 

あの時の辰吉さんの状況と試合内容と今のモンスターのそれは違うので参考には出来ませんが、間違いなく言える事はどちらも大試合前のタイミングで本を出す強心臓の持ち主という事です。ドネアとのWBSS決勝は近年稀に見るエキサイトマッチでした。現地からの観戦記を書いた記事です。

 

ドネア戦の前に、ピンチになった時の事も考えて密かにクリンチの練習もしてたというモンスター。実際に9ラウンドにドネアの右ストレートを被弾してクリンチする場面がありました。面白いのが、あのシーンを見た小國以載さんのコメント。

「あれ?井上君。クリンチ下手やん!」

 

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「僕なんてピンチの連続やから、めちゃクリンチ上手いっすよ笑 井上君のあのクリンチ見て・・ ピンチになった事がないから、慣れてないんやなぁ~て思いました。あれだけ世界の強豪と連続で試合してピンチがなかったって事自体が凄い事ですけどね」

 

あの9ラウンドは現地でも女性ファンの悲鳴があがったシーンですが、クリンチの上手い・下手なんて1ミリも考えもしませんでした。こうやって色々な視点からあの名勝負を振り返るのも面白いですね。

 

 

 

強く殴れない相手

オンとオフは自然に確実に切り替えをしてて、グローブを付けた瞬間に”拳は自らを表現するツール”になり、相手を殴ることに何ら躊躇はないというモンスター。でもスパーリングパートナーを長く務めてくれてるジェネシス・セルバニアだけは別らしいです。仲良くなるにつれ愛嬌のある笑顔を見ると、強くは殴れなくなる・・との事です。

 

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感想

これを聞いて「ボクサーなのに強く殴れないなんて!そこは相手が誰であろうが切り替えて欲しい」なんて1ミリも思いません。あの井上尚弥ですから、そんな当たり前の事は一周してて、それでも何百人何千人とスパーする中で一緒にトレーニングする期間が長かったり仲良くなると、そういう感情を持つ相手も時にはいるというだけの事。自然というか、人間なら当たり前じゃないかと思います。

 

・・個人的にひとつ気になってる事があります。2018年8月25日に金沢で行われた井上尚弥 vs ジェネシス・セルバニアのスパーリング。見る人によって感想は違うでしょうが、僕の目にはこのスパーでのモンスターはセルバニアにパワーで押されている様に見えました。

 

セルバニアはフェザー級の選手なので、2階級上だとさすがにパワーがあるのか、この日のコンディションの違いもあったのかな?ぐらいに考えてましたが、こうして本人の著書に「セルバニアだけは強くは殴れなくなる」なんて書いてあるのを見ると、シンプルにそういう理由もあって押されている様に見えたのかなと想像してしまいました。ただの考え過ぎかもしれません。

 

スパーとはいえ素晴らしい打ち合いですので、まだ見ていない方は是非見てみてください。YOUTUBEで「井上尚弥 セルバニア」で検索すれば現地撮影の映像がアップされています。

ゾーン体験

ドネア戦を含まないプロ18戦の中で、不可思議な異次元空間「ゾーン」を体験した事が2回あり(ナルバエス戦とパヤノ戦)それぞれの試合でどんな状況の中で何を感じて、モンスターの目に何が見えたのかが鮮明に言語化されてます。

 

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特にパヤノ戦。相手の呼吸と自分の呼吸がピッタリ合って、暗闇で標的にスポットライトを当てたかの様な1本の光の道が見えて・・その前後のあたりからの描写は鳥肌モノです。

感想

1ファン目線ではナルバエス戦はパワーで圧倒していて、どちらかというとパヤノ戦の方が”まさにゾーン”という勝ち方に見えていたので・・えっ。ナルバエス戦もゾーンだったんだ?というのが正直な感想です。そのナルバエス戦で初回に右拳を骨折した時の感覚の事が超リアルに書かれてるのですが、現地観戦の時はただただナルバエスを圧倒しまくった様に見えていたので、実はそんな状態に陥った中での試合だったのか・・と改めて別の意味でモンスターの凄さを感じました。

 

冷静過ぎるマクドネル戦の振り返り

バンタム級に階級アップしての初戦、初回KOで終わらせたマクドネル戦。スピードとパワーで粉砕したと言えばそれだけで表現できる様な瞬殺劇でしたが、ファーストコンタクトからフィニッシュに至るまで「考える」「判断する」という作業を「どの場面で」「どのように」やったのかが具体的に書かれています。

 

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最初の数発で「軽いジャブを打ってるのではなく、体に力が入っていない。行けるのでは?」井上レーダーがそう反応してから最初のダウンを奪うまでと、立ち上がったマクドネルに対して何を考えながらあの攻め方を選択したのかが良く分かる内容です。

感想

勝利をデザインする作業。それが分かりやすく1ラウンドに凝縮された事例で感銘を受けました。試合当日のSNSでは圧勝劇を絶賛するツイートが爆発していましたが、なかには「フィニッシュの直前に井上も危ないタイミングでパンチを貰ったのでヒヤっとした。ああいう被弾に今後は気を付けて欲しい」みたいな感想もあったのを覚えてます。結論から言うと、あの被弾すらも何から何まで全て想定したうえで、あえて最後はラフに攻めているのです。

意外かな?ディズニーファンです

井上尚弥は大のディズニーファン!母の美穂さんがディズニー好きだった影響で生まれた時から家はディズニーグッズで溢れビデオも揃っていたとの事。ちなみに奥さんの咲弥さんとの初デートで観た映画はこの「僕の初恋をキミに捧ぐ」だそうです。

 

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感想

意外とは思いませんが、読むまで知りませんでした。数多くテレビ番組に出演しているのに、たまたまなのかディズニーネタにはほとんど触れてないんじゃないですかね。

 

ボクシング好きで井上尚弥を知らない人はもういないので、新たなファン層を取り込むきっかけは色々なところにヒントがあるはずだと想像すると、何かの番組でぜひ一度ディズニーファンである事の公言して好きなシーンやセリフを熱く語ってみて欲しいと思います。そんなモンスターも見てみたい。

まとめ

この勝ちスイッチは大見出し7項目の中に小タイトルが付けられた構成になっており、
小タイトルを数えたら33個ありました。僕がこのブログに書いたポイントは見出し①~⑨で9個なので33個分の9個・・ですが全体の約3割弱はこの著書の魅力を伝えられたかというと・・ぜんぜんです!笑

 

つい長文になり過ぎてしまうのでかなりハショって書きましたが、これを書いた目的は冒頭でお伝えした通り「まだ読んでない人に素晴らしさを伝えて、読みたいと思って貰う事」です。

 

読んだ前後で何が変わったかというと、彼の出演番組や試合映像を見るのがより楽しくなりました。彼の性格や思考、好きなものや嫌いなもの、影響を受けた人物や目指すところ、『結果の出る生き方』を作っている思考術が具体的に書かれています。人間・井上尚弥をより深く知る事で彼の作品(試合)が、より立体的に見えてくるのです。

例えばドネア戦の映像を振り返るという、ファンなら誰もが繰り返してる行為においてもこの著書を読んでから見ると、前は見えなかった気付きポイント&なるほどポイントが沢山見つかります。是非読んでみてください!

 

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他にも思い出すキーワードが沢山・・心を強くする方法/フード付きのガウンを使わない理由/コスチュームへの拘り/拓真への思い/結果的にプロポーズになった言葉/結婚して良かった/300坪の豪邸/初めてのバイト代・・これでも全体の3割も書いてないと思います。

 

以上、書評シリーズ第1回「井上尚弥の著書 勝ちスイッチの感想とおすすめポイント 」でした!

 

 

 

 

 

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